Shoulder — 001

肩は、
下げるほどいいのか。

「肩の力を抜いて」「肩を下げて」「首を長くするように」

ストレッチやトレーニングで、よく聞く言葉です。けれど、もともと肩が下がっている人の場合はどうでしょうか。

実際、肩に力が入りすぎている人なら、この声かけで動きやすくなることがあります。

ただ、すでに下がっている肩を、さらに下げる。

それによって、かえって身体を動かしにくくしていることもあります。

肩が下がって見える人

スマホやパソコンを使っていると、身体は前かがみになりやすい。

頭が前へ移動し、肩が内側へ巻き込まれる。

すると、頭と肩の位置関係が変わり、肩は相対的に下がります。

けれど、前かがみの姿勢を見ると、肩が上がっているように感じるのか、さらに肩を下げようとする人がいます。

姿勢を直そうとして、必要以上に胸を張る人もいます。

けれど、その肩はすでに下がっているかもしれません。

下がっている肩を、さらに下げようとすれば、かえって身体を動かしにくくなることもあります。

ただし、前かがみだから身体に悪い。頭が前に出ているから、肩に問題が起きる。

と、姿勢だけを見て原因を決めることはできません。

僕が確認したいのは、

今の肩の位置で、
身体を動かすと何が起きるのか。

ということです。

肩の位置を変える前後の身体を比較したイラスト
見た目の形だけでなく、肩の位置を変えたあとに起きる反応を確認します。

肩を下げるのではなく、一度持ち上げる

実際のセッションで、足裏にかかる体重の位置に偏りがあったり、身体をひねると背中や腰が張るケースがありました。

そこで、肩の位置を少し変えてもらいました。

行ったことは、次の3つです。

  1. 肩をすくめるように持ち上げる
  2. 肩と肩甲骨を、背骨へ集めるように寄せる
  3. その位置から力を少し抜き、肩を落とす

ここで大切なのは、肩を上げたまま力を入れ続けることではありません。

一度持ち上げて、後ろへ寄せる。その位置を大きく崩さない範囲で、余計な力を抜いてもらいました。

肩を持ち上げ、後ろへ寄せ、力を抜く3段階を示したイラスト
肩を上げ続けるのではなく、位置を整えたあとに余計な力を抜きます。

変わったのは、肩だけではなかった

肩の位置を変えたあと、もう一度同じ動きを確認しました。

すると、次のような変化がありました。

  • 鎖骨や胸の周辺が、後ろへ引かれるように感じる
  • 呼吸が楽にできる
  • 足裏全体が、床にベタッとつくように感じる
  • 立ったときに身体が安定する
  • 腕が引っ掛かりなく動く
  • 脚を軽く持ち上げられる
  • 楽に後ろを振り向ける
肩の位置を変えたあとに呼吸、足裏、腕や脚、身体のひねりを再確認するイラスト
肩だけで終わらず、呼吸や足裏、腕や脚の動きまで同じ条件で確認します。

背中や腰に出ていた張りや痛みも軽くなり、状態によっては感じなくなることもあります。

ただ、肩の位置を変えたから、足裏や股関節の問題が解決した。とまでは言えません。

肩の位置という、ひとつの条件を変えたあと、
同じ動作と身体の感覚が変わった。

この場で確認できたのは、そこまでです。

肩の位置と、身体全体の動き

肩は、腕だけに関係する場所ではありません。

肩甲骨は胸郭の上にあり、鎖骨を介して身体の中心ともつながっています。

腕を動かすときには、肩関節だけでなく、肩甲骨や胸郭も一緒に動きます。

さらに、身体をひねるときや歩くときには、肩まわりと骨盤が互いに動きながら、身体全体の動きをつくります。

そのため、肩の位置が変わったあとに、体幹や脚の動きまで変化すること自体は不思議なことではありません。

一方で、どの部分が、どの変化に、どれだけ関係したのか。

そこまでを、ひとつの反応から特定することはできません。

だからこそ、変化の理由を先に決めるのではなく、身体に起きた反応を一つずつ確認します。

適切な肩の位置は、ひとつなのか

肩を下げることが間違いで、肩を上げることが正しい。という話ではありません。

肩を上げることで楽になる人もいれば、首や肩に力が入り、かえって苦しくなる人もいます。

僕が肩の位置を考えるときは、次のようなことを一緒に確認します。

  • 呼吸はしやすいか
  • 姿勢は安定するか
  • 腕や脚は動かしやすいか
  • 痛みや不快感はどう変わるか
  • 力を入れ続けなくても、その位置を保てるか

見た目だけで正常な位置を決めるのではなく、その位置に変えたあと、身体にどんな反応が起きるのかを見る。

肩を下げる前に

肩に力が入っているように見えると、つい下げたくなるかもしれません。

けれど、見た目には同じように見えても、身体の中で起きていることは人によって異なります。

肩を下げる。肩を上げる。

どちらかを先に正解と決めるのではなく、ひとつの条件を変えたあと、身体の反応をもう一度確認する。

肩の位置も、そのように考えていきます。